GIFTのカタチ

もうずっと前、小学校の担任の先生からもらった言葉。
「新幹線はとても速くて便利だけど、速いがために周りの景色にゆっくりと目をやれないし、通り過ぎる場所にいる人やあることに出会うことももちろんない。歩くことは確かに遅いし疲れるけど、ゆっくりだから景色に想いをはせることも出来れば、その場所が心地よければ立ち止まることも出来る。物事にはいいことも悪いこともあるけど、いつ新幹線に乗るのか、いつ歩くのかをちゃんと考えられる人になってね」
今となってはなぜこんな話になったのか、なぜ先生は新幹線を例えにしたのかは分からないし、今の僕はその記憶の扉を開ける鍵の在処を思い出せない。それでもこの会話のこの言葉は何十年も僕の中に残ってる。

確かめることは出来ないけど、きっとこの時先生は、“いいこと言うぞ、記憶に残る言葉を話すぞ”とは思っていないと思う。
さらにもっと正直に言うと、僕が今ここに書いている言葉と先生の放った言葉は違うと思う、というかきっと違う。
正確に言うと、言った内容は似ている物だとは思うけど、一言一句覚えているわけではないから、いや、覚えているはずがない。僕の記憶力がそんなに有能でないことは僕自身が何より承知している。

人は、矛盾を抱えながら忘れていく生き物だ。そういう点でいつか僕はこの言葉を忘れてしまう瞬間が来るのかもしれない。その時はその時だとは分からない。
たとえ覚えていても、思い出すタイミングや環境によっては選ぶ言葉も変わってくると思う。

僕は弱いから、記憶には矛盾と無責任がつきまとってしまう事を否定できない。
それでも、言葉の存在のその前に、確かに心を動かしてくれた人や出来事への感謝の気持ちは肯定し続けていきたいって思うよ。

kuroshishiro's feeling

染めて黒、染めずに白。

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